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こんばんわ!
「いじめ-ラボ」管理人のはかせと申します。
今回の記事は「学校の対応」をテーマに、加害者側を退学処分にした学校の対応が「違法」とされた判例を紹介して行きたいと思います。
この記事の基となった判例は「広島県城北高校の退学処分違法判決事件」です。
被害を受けた子(その保護者)であれば、出来る事なら「退学」や「厳罰」にして欲しいと必ず思うと思うハズですが、今回の判例のおかげでこれからの「学校の懲戒処分」が消極的な方向に向かう可能性が出てくるでしょう。
実際に私「はかせ」も我が子が被害に遭ってしまい、何度も学校との話し合いで加害者側の処分をお願いしてきました。
結果、全員ではありませんが加害者側に退学処分を出してもらう事が出来ました。
本当であれば「被害を受けた子」の学習環境を整える事が筋であるハズなのに、この判例では加害者側の懲戒処分が違法とされて「学校側を設置する地方公共団体」が損害賠償金を支払う羽目になってしまいます。
これからご紹介する判例の中では「学校側の対応」が詳しくまとめてありますが、
・加害者側の退学処分の基になった事件の内容
・それに対する学校の対応
そこから「何が問題になって学校の対応が違法とされたのか」を調べて行きたいと思います。
今回の判例が特に「高校生の子供を持つ親」にとって、重要な判例となる事は間違いないでしょう。
※今回の記事の他に「いじめ-ラボ」では、私たち家族が子供のいじめを通して感じた事や学んだ事をベースにまとめています。
もし、我が子が不登校になってどう守って行けば良いのか分からなくなった時にも、あわせて読んで頂ければお役に立てる内容となっています。
実際に裁判を起こしたり、弁護士や行政書士の方のお話を聞いたりと解決策に向けて取り組んできた事の内容を書いていますので是非1度読んでみてください!!
※いじめ問題についてまとめたサイトはコチラ!!
『いじめ-ラボ』
「退学処分」の基となった事件の内容
今回の騒動の基となる「いじめ」の被害者を「A」とし、加害者である生徒は6人で、「B」「C」「D」「E」「F」「G」とします。
今回の裁判を起こした生徒(退学処分を受けた生徒)は加害者6人の内の「B」と「C」。
この2人の犯したいじめの内容は、
・Bは他の4人のいじめを動画でアップしてLINEに流す
・CはAをからかう、顔を殴る、AとEの剣道の試合をLINEにアップする
「D」「E」「F」「G」4人のいじめの内容は、
・DはAに対し突き飛ばす、ワザと肩をぶつける、殴る等の直接的な攻撃を行う
・Dに触発されてEとFはAに物を投げつける、Fはこれらを動画で撮影しアップする
・GはAの股間を叩く
後者の4人の内容の方が、悪質で頻度も多かったことが裁判で明らかになっています。
問題の発覚
問題の発覚はある日の体育の授業の時で、内容は「剣道」の試合でした。
加害者側のEがAと剣道の試合をする事になり、その内容をCがスマホで動画を撮る様にEから依頼された事がキッカケでした。
AがEに対して行った攻撃が原因でEがAを滅多打ちにして腕を負傷させ、先生に病院に連れて行ってもらった時に報告し発覚します。
Aがこの時に先生に報告した事は、
・「D、E、F、G」によっていじめられている事(BとCの名前は挙がっていない事が裁判で判明)
・特にEとFが許せない
後の段落で「加害者に対する学校の対応」でも書きますが、この4人に対して行われた事情聴取によりBとCが関わっていた事も明らかになりました。
Aが被害に遭っていた期間も1年以上の長期に及んでいた事が判明し、学校側が「自宅謹慎」から「退学処分」へと対応を進める事となります。
加害者に対する学校の対応
この剣道のケガにおけるAの先生への報告により、Aが長期に渡って被害を受けていた事が判明しました。
まず最初に学校が行った事はD、E、F、Gからの事情聴取、そこからFが普段行われたいじめを撮影した動画を確認する作業です。
報告を受けた先生とその他複数の教師がこの動画を確認し、保存せずにFに消去させてしまいます。
また、ここで初めてBとCも動画撮影に関係していた事が判明し、BとCが撮影していた動画も同様に消去させました。(BとCには事情聴取は無く、動画を消去させられただけ)
この確認作業の後に校長を始めとする「いじめ防止対策委員会」を設立し、そこで加害者である6人に「自宅謹慎」が言い渡されます。
そして一定期間が過ぎた後BとCの親は抗議を続けるも、退学処分は覆らず翌年に退学をしました。
これらのいじめが起きてから学校の対応が行われ退学になるまでの一連の流れを簡単にまとめてみました。
被害を受けた家族の1人でもあり、この記事を書いている私から言えば学校の対応は正当なものと思えます。
しかも、私たちのケースも同じ高校と言う事で毅然と対応した学校については素晴らしいものと思います。
最近の学校の対応は「隠蔽」が多く、まともに対応してくれる先生がいなかったので画期的な対応だったハズです。
しかし、冒頭でもあるようにこの「退学処分」について裁判では「違法」と判断されてしまいます。
この次の段落で「何故、学校の対応が違法と判断されてしまったのか!?」を判例を基に読み解いて行きたいと思います。
今回の「いじめ」について裁判ではどう判断されたのか
今回の加害者に対する学校の対応は「違法」と判断されてしまいますが、その前に今回Aが受けた被害について裁判でどう判断されているのかをまとめて行きたいと思います。
裁判での事実認定について学校側がまとめた報告書に、
・Bが他の生徒(EとF)に命令してAに対して攻撃する事がほとんどだった
・Cから受けた被害の内容は顔面を数十発殴られる事
となっており、さらにA自らが証人となって事実を証明しようとしました。
学校側が予用意した証拠を基に、裁判官の判断は次の通り述べました。
・剣道の試合後のケガの時Aが先生に報告した事は「D、E、F、G」から被害を受けていると言う事
・仮に、BやCのいじめがそうであったならAは間違いなく先生にBとC2人からも被害を受けている事を言うハズ
・Cが行った暴力は非常に酷い内容なのにも関わらず、A自身が先生に相談していない
・そこまで殴られているのなら他の生徒からも暴力が酷い事を報告受けるハズだし、他の生徒からも何にも報告受けていないとなると食い違う
学校の報告書とA自身の発言に整合性を取ることが出来ないとし、学校の報告書の内容とA自身の発言は信用することが出来ないと判断しました。
この流れからBとCが行った行為について
・AとB、C間に少なからずいじめが存在していた
・その加害行為について、必ずしも証言通りと確認する事が出来ない(発言が食い違っているから)
・従って、全ての意見を考慮してもその行為自体に深刻性は見られない
と判断されしまいます。
しかし、その後の審議の中で認められた事もあって「いじめ加害者」がしてきた事については「被害者の学校生活の秩序を乱し、高校の教育方針に反する行為」と認められました。
何故、今回の「退学処分」は違法と判断されたのか
学校側が「退学処分」を行うには条件が必要になります。
生徒を退学させる事は生徒自身の身分に関わってくる大事件になりますので、簡単には出来ない事になっている事はこれを読んでいるあなたもご存知のハズです。
学校教育法施行規則第26条3項では、退学処分をする為の4つの条件が記載されています。
その条件とは...
前項の退学は、公立の小学校、中学校(学校教育法第七十一条の規定により高等学校における教育と一貫した教育を施すもの(以下「併設型中学校」という。)を除く。)、義務教育学校又は特別支援学校に在学する学齢児童又は学齢生徒を除き、次の各号のいずれかに該当する児童等に対して行うことができる。
一、 性行不良で改善の見込がないと認められる者
二、 学力劣等で成業の見込がないと認められる者
三、 正当の理由がなくて出席常でない者
四、 学校の秩序を乱し、その他学生又は生徒としての本分に反した者
引用元:e-Govウェブサイト
今回のいじめはこの項目の4番目の項目に該当するのですが、該当するのにも関わらず「違法」とされてしまった理由は「加害者に対してキチンとした説明や弁明の機会を与えなかった事」が原因とされています。
先ほどの裁判では「自宅謹慎」を加害者側に言い渡した学校は、加賀者側の生徒が「今後更正して学生としての本分を果す事が出来るのかどうか」を審議すること無いままに「謹慎」から「退学処分」へと決定していた事が明らかになってしまいました。
退学処分は生徒の身分に重大な処分を与えてしまう事から、生徒自身が更正できるかどうかを審議し弁明の機会を与えなければならないという事になります。
つまり、
「BとCがやってしまった事」<「適正な手続きのもと、BとCが更正できる可能性」
と裁判で判断されたため、今回の退学処分は違法と判断されたと言う事になります。
いじめ加害者に対する「退学処分」が裁判で違法となった判例 まとめ
今回の記事は学校の対応(退学処分)が違法と判断された内容を詳しくまとめていきました。
義務教育では「退学処分」は出来ませんが、高校生の場合だと「退学処分」は可能となります。
今回はこの退学処分を行使する上での条件は何なのかを簡単に説明しています。
被害に遭った子やその家族であれば「いじめ加害者」は絶対に追放したいと思うハズですが、その要件として「どれだけ内容が酷かったのか」や「加害者が更正できないほどの状況だったのか」が必要になってきます。
今回の場合だと学校の対応の不手際で退学処分が違法となってしまうのですが、不手際と言えばこの学校の教師はLINEの動画を保存もせずに削除しています。
ただ「動画を撮っていた」だけで無く、「どのような」動画だったのかを証明する事が出来たのならもしかするとこの判決は違った結論に至ったのかも知れません...。
裁判は「証拠」が命になります。
逆に言えば「証拠」が無ければ主張を認めてくれません。
例えば、被害者側の生徒の方でLINEでアップされた動画を抑える事や日頃の暴力でケガを負っている事(剣道の時のケガも診断書を取っていない様です)など証明する事が出来たら尚判決が変わっていた可能性が高いでしょう。
何にせよ、裁判で「退学処分が違法」という事実は残ってしまうので、これからの学校の対応では「加害者の保護」がより一層強くなる傾向になるかも知れません。
本来であれば「被害者の保護」を確立しなければいけないのに...
このような結果にならないためには、いじめが起きてからでも前兆を見抜いた時でも良いので早めに学校との話し合いを経て今後どうするのかの対策を取る事に尽きます。
この判例を活かす為にも、日々法律について少しずつ私たち自身が学んでいかないといけないようです。
最後に、いじめ-ラボでは「我が子のいじめ被害」を元に記事を更新していますので良かったら一度読んでみてくださいね!!
長文となりましたが、最後まで読んで頂き本当にありがとうございました!
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