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こんばんわ!
いじめーラボ管理人の「はかせ」と申します。
今回の記事は「いじめ 裁判」をキーワードとして、実際にあった裁判の内容や判決をまとめていきたいと思います。
実際にあった裁判の内容や判決をまとめていく事で、
- 「いじめ」の何が問題になっているのか
- 事実の証明で「認められたもの」と「認められなかったもの」の違いは何か
- 「学校の対応」で問題となっているものは何か
- 実際にどれ位の期間が掛かるのか(事件の日と判決の日が書かれているから)
など、裁判で「違法(または不当)」とされている事(私たちがなかなか知り得ない内容)を知る事が出来るでしょう。
今まさに我が子のイジメを学校や専門家に相談しようと思っているのであればこの記事に書いている事は必要最低限抑えておいた方が良い情報だと私は考えています。
さらに、判例は「今後このような痛ましい事件を起こさないようにする為の教訓」という意味合いの他に「加害生徒側や学校の対応について責任を問う為の方法や経緯」についても書かれています。
本当に「いじめで苦しむ生徒を減らす」と考えているのであれば、単に痛ましい事件がありましたと過去形にするだけで無く、
・「事なかれ主義」の今の学校で、加害生徒や学校への責任を問う為にはどうすれば良いのか
私たち自身が判例を見て考えて行く必要があるでしょう。
「法律は知っている者のみを助け、知らないままの者に手を差し伸べる事は無い」
弁護士だけに任せっきりでは無く、我が子の事は私たち親がしっかりと守って行かなければならないと思います。
この記事では裁判での内容をもとに
- いじめの内容
- 学校側の対応はどんな内容か
- 裁判での争点となっている所
を詳しくまとめていますので、参考にしてもらえれば嬉しいです。
市邨学園で起きたいじめ事件の全容について
この記事で紹介する内容は2002年に起きた名古屋市の「市邨(いちむら)学園」のいじめ自殺事件で、この事件の被害者は高橋美桜子さん(享年16歳)です。
美桜子さんは中学校入学時からいじめを受けて転校を繰り返し(その内フリースクールにも転入している)、高校2年生の時に住んでいたマンションから飛び降りて自殺してしまいます。
※今回の記事の作成するにあたって参考にさせて貰った判例はコチラになります。
今回の事件の裁判では遺族側と加害関係者が全面的に対立し、解決に10年以上掛かっていて「学校の対応=隠蔽」で有名な「大津の事件」よりも前に起こったこの「市邨学園いじめ事件」は、学校の悪質な対応のイメージのベースになった事件でもあります。
裁判では嘘の証言(?)や遺族側への侮辱などやりたい放題だった事など、自殺に対する責任を感じている様子は少しも感じられない様子である事が明らかになりました。
美桜子さんに起きたいじめの内容について
美桜子さんが市邨学園中等部(中高一貫)に入学した当時から、美桜子さんに対するいじめが始まります。
実際に行われた内容は、
- シカト
- 悪口(ウザい、キモいなど)※上記悪口をワザと本人に聞こえるように言う
- スカートを切る
- カバンを蹴っ飛ばす
- 本人のノートに「死ね」などを書きまくる
- 掃除の時に教室のゴミを美桜子さんの机の下にまとめる
- 美桜子さんの机だけを廊下に出す
- トイレの個室に入っている時に上から水をぶっかける
- 上靴の中に画鋲
など、直接的な暴力(それに近いものはあるけれど)は無く、間接的な「コミュニケーション系のいじめ」が多いのが今回の特徴とも言えます。
また、中学校当時在籍していた部活(バトン部)でもほぼ全員からいじめの標的になっています。
- バトンに必要な備品を壊される
- 練習中にジャマしたりワザとぶつかったりして美桜子さんが悪者の様に扱い、バトン部での立場を悪化させる
といったいじめを受け、最終的にバトン部に居られなくなり退部しています。
美桜子さんの人柄について
何故、ここまで美桜子さんがいじめに遭ってしまうのでしょうか??
小学校時代の美桜子さんは非常にハキハキしていて、誰にでもハッキリと意見を言う事が出来るタイプの子だったそうです。
個人の力が強いとその分「影」も強くなり風当たりも強くなるのがいじめの特徴で、「学校のいじめ」で良くありがちなパターンと言って良いでしょう。
その後被害者の美桜子さんは学校にいられなくなり転校を複数回繰り返す事になりますが、その間に精神疾患を煩い医師から「解離性同一性障害」と診断され、今回の裁判で重要なポイントとなります。
授業中に倒れたり、急にパニックになったりと日常生活もままならないほど心をすり減らし、最終的に住んでいたマンションから飛び降り自殺をしてしまいます。
また、自殺するちょっと前までによく見られた症状として
- 自分を上から見ているような感覚になる
- 自分の中に複数人の女の子がいる
- 腕や足の力が急に入らなくなる
- 動悸が激しくなる
などの症状に常に悩まされていたことが裁判で明らかになっています。
いじめに対する市邨学園の対応について
美桜子さんのいじめにたいして市邨学園の対応(学校の対応)はどういった対応だったのか!?
判例の内容を調べてみると、
- 美桜子さんの親が学校に話し合いをする為に行っても理事長や校長は一切話し合いには出席しない
- 話し合いに参加した先生は担任ではない他のクラスを担当している先生
- 話し合いが出来ないから「内容証明通知」で学校に対応を求めていても、送った封筒に大きく「受取拒否」と書いて送り返す
- 上靴に画鋲を入れられた件についてはやった生徒に注意すら無い
- 美桜子さんから直接いじめの相談(上靴に画鋲入れられた件)を受けても「いじめではない」と発言
と言った対応が行われていた事が明らかになっていて、「学校でいじめはなかった」というスタンスを最後まで崩す事はありませんでした(対応すらしなかった)。
さらに裁判で問題視されていたのが「学校の発言」で、
- 「いじめで学校行きたくない!?そんなもん顔引っ張ったいて首に縄付けて引っ張って来れば良い」
- 「アンタは内部の教員だから娘がいじめられるのは有名税」(美桜子さんの母親は市邨学園を運営している大学の助教授をしていました)
- 「いじめがあったなんて一度も聞いたことない」
- 「いじめはそっちが騒いでいるだけで、じゃれ合いとの認識の差だけの問題」
およそ子どもの将来のために勉強を教える学校が発言する内容ではない事が美桜子さんの親に対して言われていた様です。
これら学校の対応が影響して裁判自体も終結まで3年近く掛かってしまい、「いじめ発生」から「裁判が終結するまで」の期間は10年近くになってしまいました...。
※学校の対応に不満があった時に非常に役に立つ本を紹介していますので一度読んでみてください!
市邨学園で起きたいじめは裁判でどのように判断されたのか
この段落では、自殺してしまった美桜子さんの遺族側が裁判を起こしたときに「争点となったポイント」をまとめていきたいと思います。
いじめの裁判(判例)で何が重要になっていて何が争われているのかを予め知っておく事は裁判の対策だけでなくいじめの対策としても有効な手段になるでしょう。
市邨学園でのいじめで「証拠」となったもの
学校で起きたいじめを裁判で争う時に重要なのは「証拠」をいかに集めてくるかと言う事ですが、学校(教室)という場所での証拠集めは非常に難しいハズです。
今回の市邨学園のいじめ判例で「証拠」となったものの代表例として「録音」が挙げられます。
市邨学園のいじめ判例でも実際に録音された内容が書かれてあり、美桜子さんの母親は加害者である生徒と当時のいじめについて誰が主犯格なのか、クラスで助けてくれる人はいなかったのかなど「いじめの事実関係」について話し合いをする機会がありました。
ただ、その時に相手側の生徒の発言の自由を奪う様な形で話し合いが成されたので(葬儀の写真を見せたり、嘘をついたら許さないと凄んで見せたり)、裁判では採用されない部分があった事が判明しています。
何でも「録音」すれば証拠になるわけではなく、
- 相手側の発言を妨げる内容であれば裁判で採用されない場合がある
- 話している内容が本当に事実なのか
その「証拠」が本当に信頼出来る内容なのかを検討する必要があるでしょう。
学校の対応はどう判断されたのか
今回の裁判で「学校の対応」がどのように評価されたのか!?
結論からまとめると学校側はいじめの対応をしてきたとは認められず、さらには美桜子さんがいじめられていた事が容易に認識でき、学校内での調査報告もされていなかったと判断されました。
冒頭でまとめた様に美桜子さんが受けた被害内容は、
- シカト
- 悪口(ウザい、キモいなど)※上記悪口をワザと本人に聞こえるように言う
- スカートを切る
- カバンを蹴っ飛ばす
- 本人のノートに「死ね」などを書きまくる
- 掃除の時に教室のゴミを美桜子さんの机の下にまとめる
- 美桜子さんの机だけを廊下に出す
- トイレの個室に入っている時に上から水をぶっかける
- 上靴の中に画鋲
と言った様に「証拠」として残らない間接的なものがありますが、美桜子さんの母親がいじめた生徒と電話したり担任の先生と話したりした内容を録音していた事が「いじめの事実」を認める後押しをしていると言えるでしょう。
また、いじめていた生徒達の事情聴取から学校側の発言(いじめを早期に対応していた)と食い違う内容が出てきたために裁判では学校側の言い分を認めない(信頼出来ない)と判断している事も明らかとなっています。
さらに担任から校長・理事長への報告もされていなかった事も明らかとなりました。
最終的に学校側の一連の対応は、美桜子さんが受けたいじめを知っていた(知る事が出来た)のにも関わらず放置していた事と判断されてしまい、「安全配慮義務違反(生徒を学校問題から守る義務を破った)」と評価されてしまいました。
加害者側が「友達だからいじめじゃない」と言ってきたら
加害者側がよく言い訳の様に言ってくる内容として、
- 「友達だと思って自分は接していた」
- 「仲良しのハズだった」
- 「じゃれ合いの延長」
- 「いじめるつもりは一切無い」
このセリフはよく耳にすると思いますが、仲良ければ何やっても良い訳ではありません。
「友達関係であること」が裁判で判決内容に影響することがあるのでしょうか!?
今回の裁判では「友達関係」でも行った事に対しての「線引き」となる判決となっています。
実際の裁判で裁判長が言った内容は、
しかし,プロフィール帳を交換したり,一緒にプリクラを撮影したことがあったとしても,思春期の生徒であれば,人間関係をさらに悪化させないため,表面的に取り繕って付き合いをしているだけの可能性も十分に考えられるから,これらの事実が認められるからといって,ただちに前記認定の本件6名の各行為がなかったということはできない。
となり、友達関係の仲でもいじめはいじめだと裁判長が一線を置いている内容となっています。
簡単に言えば「嫌われない様に敢えて友達だと体裁を整える行為をする事もある」とし、今回の一連の関係を一種の社交辞令的なものとして友達だから許される訳ではないと判断していると言う事です。
実際「友達関係」だったとしても、子供達が何時どこで何をやっているのか分かりません。
「あの子と一緒なら大丈夫」と安心していると、見えないところで事件が起きている場合があるかも知れません。
我が子に少しでも異変を感じたら、友達関係から調べた方が良いかも知れませんね。
いじめと精神疾患との関連性
今回の裁判(判例)でポイントとなった事は「いじめ」と「解離性同一性障害」との関連性が認められたことです。
今までの裁判では「いじめ」と「損害」の因果関係が成立する事が裁判を有利に進めていく要素となっていました。(問題があったからこの損害が発生したと言う具合で)
以下の引用は判例文の中から引用したものです。
被告学園の関係者が何らの対応も行わず,放置したことによって,Aが解離性障害を発症し,その後解離性同一性障害に罹患し,本件自死に至ったことは明らかであり,被告らにおいて,平成14年10月以降,本件6名に対する適切な措置を講じていれば,その後の本件6名による行為の続発を阻止することができ,Aが絶望感を持つこともなく,解離性同一性障害に罹患し,本件自死に至ることもなかったと認められる。
今回の判例だと、美桜子さんが「解離性同一性障害」と診断されたのは自殺する2年前ですが、
- 強いストレスを受けると、それだけ「解離症状」が表面化するのにも時間が掛かる場合がある
- 中学生の時から「初期の解離症状(自分がやられている場面を外から見ている様に感じる)」が出ていた
と認められ、ある程度の時間の経過があったとしても「いじめ」と「解離性同一性障害」との因果関係を認める判決となりました。
約2年の月日が経っても裁判で「いじめ」と「精神疾患」との因果関係を認める判決が出たことは非常に珍しい出来事になります。
もしかすると「精神疾患」が認められるケースが増えるかも知れませんので、早めに弁護士に相談するべきでしょう。
被害者の子が自殺したことの責任について
今の裁判で「いじめ」と「自殺」との関連性は密接な関係にある(因果関係が認められる)と判断されています。
この裁判が行われている時(平成23年)には、既に「いじめを放置してしまうと自殺の危険性がある」という事が世間一般的に認知されているとされていますから
- 学校でいじめが起きていた
- いじめを認識する事が容易であった
- 学校がいじめの対応をしなかった(放置していた)
以上の事実が認められている場合には、「いじめ」と「自殺」の関係性が認められると言って良いでしょう。
判決では学校といじめていた生徒達に美桜子さんが自殺してしまった責任を認めていますが、美桜子さんの母親にも「自殺してしまった責任」があると判断しています。
なぜならば、母親の持病が原因で検査入院をする事になり検査入院で家を空けているときに美桜子さんがマンションから飛び降り自殺してしまったからです。
今回の判例では、
- 美桜子さんはいじめを受けて「解離性同一性障害」になった
- いじめによって自傷行為が増え、リストカットなどの行為を頻繁に行う
- 転校してからも容態が良くならず、救急車で運ばれることも度々あった
- 医師からも「なるべく1人にしないように」と言われていた
という風に事実関係が認められていて、「いつ自殺するか分からない子を1人にしてしまった事」に対して自殺の責任を裁判で指摘されてしまいました。
この「1人にしてしまった事への自殺との関連性や責任」については賛否両論あると思いますが、あくまでも裁判は公平に行われるので損害賠償額の減額になる可能性が高い様です。
解決までに10年掛かった名古屋「市邨学園」いじめ事件のまとめ
この裁判で遺族側は相手側(加害者と学校に)に
- 被告らは原告(遺族側)に対し約4300万の損害賠償金を支払う
- 被告学園と理事、校長、担任に対しそれぞれ原告に対し100万の損害賠償金を支払う
事を求めました。
そして最終的に、
- 被告らは原告に対し約1500万の損害賠償金を支払う
- 原告のその他の請求を棄却
と判決が下されます。
裁判を提起してから約3年が経ち、一応の終結が成されましたが裁判に「10年」もかかったのは「学校側の対応の遅さ」が原因になっている事は明らかで、最早悪意があると言われても仕方が無い内容となっています。
今回の記事では「市邨学園」で起きた事件の内容をまとめ、裁判で争点となったポイントをまとめてきました。
特に「精神疾患」が時間が経っていても認められるとした画期的な裁判として有名でもあります。
当り前の様に聞こえますが、当時の裁判では稀な判決でその後のいじめ問題に対して非常に有意義な判例となっていてこれから「弁護士に依頼して裁判」と考えているのであれば参考になると思います。
最後に「いじめ-ラボ」では我が子のいじめをベースに記事を更新しています。
もし良かったら他の記事も読んでみてください!
最後まで読んで頂き、本当にありがとうございました!!
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