解決までに10年掛かった名古屋「市邨学園」いじめ事件の内容

この記事を書いた人「はかせ」
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いつもご覧頂き本当にありがとうございます。
管理人の「はかせ」と申します。

今回の記事は「いじめ 裁判」
キーワードとして、

実際にあった裁判の内容や判決
まとめていきたいと思います。

実際にあった裁判の内容や
判決をまとめていく事で、

  • 「いじめ」の何が問題になっているのか
  • 事実の証明で「認められたもの」と「認められなかったもの」の違いは何か
  • 「学校の対応」で問題となっているものは何か
  • 実際にどれ位の期間が掛かるのか(事件の日と判決の日が書かれているから)

など、裁判で「違法(または不当)」と
されている事を知る事が出来るでしょう。
(私たちがなかなか知り得ない内容)

今まさに我が子のイジメを学校や
専門家に相談しようと思っているのであれば

この記事に書いている事は
必要最低限抑えておいた方が良い情報だと
私は考えています。

 

さらに、判例は

「今後このような痛ましい事件を起こさないようにする為の教訓」

という意味合いの他に
加害生徒側や学校の対応について

責任を問う為の方法や経緯についても
書かれています。

本当に「いじめで苦しむ生徒を減らす」と
考えているのであれば、

単に痛ましい事件がありましたと
過去形にするだけで無く、

・「事なかれ主義」の今の学校で、加害生徒や学校への責任を問う為にはどうすれば良いのか

私たち自身が判例を見て
考えて行く必要があるでしょう。

法律は知っている者のみを助け、
知らないままの者に手を差し伸べる事は無い

弁護士だけに任せっきりでは無く、
我が子の事は私たち親がしっかりと
守って行かなければならないと思います。

この記事では裁判での内容をもとに

  • いじめの内容
  • 学校側の対応はどんな内容か
  • 裁判での争点となっている所

を詳しくまとめていますので、
参考にしてもらえれば嬉しいです。

 

市邨学園で起きたいじめ事件の全容について

この記事で紹介する内容は
2002年に起きた名古屋市
市邨(いちむら)学園のいじめ自殺事件
で、

この事件の被害者は
高橋美桜子さん(享年16歳)です。

美桜子さんは中学校入学時から
いじめを受けて転校を繰り返し
(その内フリースクールにも転入している)

高校2年生の時に住んでいたマンションから
飛び降りて自殺してしまいます。

※今回の記事の作成するにあたって参考にさせて貰った判例はコチラになります。

名古屋地方裁判所 平成23年5月20日 損害賠償請求事件

今回の事件の裁判では
遺族側と加害関係者が全面的に対立し、

解決に10年以上掛かっていて
「学校の対応=隠蔽」で有名な

「大津の事件」よりも前に起こった
この「市邨学園いじめ事件」は、

学校の悪質な対応、イメージの
ベースになった事件
でもあります。

裁判では嘘の証言(?)や
遺族側への侮辱などやりたい放題だった事など

自殺に対する責任を感じている様子は
少しも感じられない様子である事が
明らかになりました。

美桜子さんに起きたいじめの内容について

美桜子さんが市邨学園中等部(中高一貫)に
入学した当時から、
美桜子さんに対するいじめが始まります。

実際に行われた内容は、

  • シカト
  • 悪口(ウザい、キモいなど)※上記悪口をワザと本人に聞こえるように言う
  • スカートを切る
  • カバンを蹴っ飛ばす
  • 本人のノートに「死ね」などを書きまくる
  • 掃除の時に教室のゴミを美桜子さんの机の下にまとめる
  • 美桜子さんの机だけを廊下に出す
  • トイレの個室に入っている時に上から水をぶっかける
  • 上靴の中に画鋲

など、直接的な暴力は無く、
(それに近いものはあるけれど)は無く

間接的な「コミュニケーション系のいじめ」が
多いのが今回の特徴とも言えます。

また、中学校当時在籍していた部活でも
ほぼ全員からいじめの標的になっています。

  • バトンに必要な備品を壊される(バトン部)
  • 練習中にジャマしたりワザとぶつかったりして美桜子さんが悪者の様に扱い、バトン部での立場を悪化させる

といったいじめを受け、
最終的にバトン部に居られなくなり
退部しています。

美桜子さんの人柄について

何故、ここまで美桜子さんが
いじめに遭ってしまうのでしょうか??

小学校時代の美桜子さんは
非常にハキハキしていて、

誰にでもハッキリと意見を言う事が出来る子
だったそうです。

個人の力が強いとその分「影」も強くなり
風当たりも強くなるのがいじめの特徴で、

「学校のいじめ」で良くありがちなパターンと
言って良いでしょう。

その後被害者の美桜子さんは
学校にいられなくなり
転校を複数回繰り返す事になりますが、

その間に精神疾患を煩い医師から
「解離性同一性障害」と診断
され、
今回の裁判で重要なポイントとなります。

授業中に倒れたり、急にパニックになったりと
日常生活もままならないほど心をすり減らし、

最終的に住んでいたマンションから
飛び降り自殺をしてしまいます。

 

また、自殺するちょっと前までによく見られた症状として

  • 自分を上から見ているような感覚になる
  • 自分の中に複数人の女の子がいる
  • 腕や足の力が急に入らなくなる
  • 動悸が激しくなる

などの症状に常に悩まされていたことが
裁判で明らかになっています。

 

いじめに対する市邨学園の対応について

美桜子さんのいじめに対して
市邨学園の対応(学校の対応)は
どういった対応だったのか!?

判例の内容を調べてみると、

  • 美桜子さんの親が学校に話し合いをする為に行っても理事長や校長は一切話し合いには出席しない
  • 話し合いに参加した先生は担任ではない他のクラスを担当している先生
  • 話し合いが出来ないから「内容証明通知」で学校に対応を求めていても、送った封筒に大きく「受取拒否」と書いて送り返す
  • 上靴に画鋲を入れられた件についてはやった生徒に注意すら無い
  • 美桜子さんから直接いじめの相談(上靴に画鋲入れられた件)を受けても「いじめではない」と発言

と言った対応が行われていた事が
明らかになっていて、

「学校でいじめはなかった」というスタンスを
最後まで崩す事はありませんでした。
(対応すらしなかった)

さらに裁判で問題視されていたのが
「学校の発言」で、

  • 「いじめで学校行きたくない!?そんなもん顔引っ張ったいて首に縄付けて引っ張って来れば良い」
  • 「アンタは内部の教員だから娘がいじめられるのは有名税」(美桜子さんの母親は市邨学園を運営している大学の助教授をしていました)
  • 「いじめがあったなんて一度も聞いたことない」
  • 「いじめはそっちが騒いでいるだけで、じゃれ合いとの認識の差だけの問題」

およそ子どもの将来の為に勉強を教える学校が
発言する内容ではない事が

美桜子さんの親に対して
言われていた様です。

これら学校の対応が影響して
裁判自体も終結まで3年近く掛かってしまい

「いじめ発生」から
「裁判が終結するまで」の期間は
10年近くになってしまいました...。

※学校の対応に不満があった時に非常に役に立つ本を紹介していますので一度読んでみてください!

弁護士が書いた いじめの対応をスマートにするマニュアル本を紹介

 

市邨学園で起きたいじめは裁判でどのように判断されたのか

この段落では自殺してしまった
美桜子さんの遺族側が

裁判を起こしたときに
「争点となったポイント」
まとめていきたいと思います。

いじめの裁判(判例)で
何が重要になっていて
何が争われているのかを

予め知っておく事は
裁判の対策だけでなく

いじめの対策としても
有効な手段になるでしょう。

市邨学園でのいじめで「証拠」となったもの

学校で起きたいじめを
裁判で争う時に重要なのは

証拠をいかに集めてくるかと言う事ですが、
学校(教室)という場所での証拠集めは
非常に難しいハズです。

今回の市邨学園のいじめ判例で
「証拠」となったものの代表例として
「録音」が挙げられます。

市邨学園のいじめ判例でも
実際に録音された内容が書かれてあり、

美桜子さんの母親は加害者である生徒と
当時のいじめについて誰が主犯格なのか

クラスで助けてくれる人は
いなかったのかなど

「いじめの事実関係」について
話し合いをする機会がありました。

ただ、その時に

相手側の生徒の発言の自由を
奪う様な形で話し合いが成された

ので、葬儀の写真を見せたり
嘘をついたら許さないと凄んで見せたり

裁判では採用されない
部分があった事が判明しています。

何でも「録音」すれば証拠になるわけではなく、

  • 相手側の発言を妨げる内容であれば裁判で採用されない場合がある
  • 話している内容が本当に事実なのか

その「証拠」が本当に信頼出来る内容なのかを
検討する必要があるでしょう。

学校の対応はどう判断されたのか

今回の裁判で「学校の対応」が
どのように評価されたのか!?

結論からまとめると
学校側はいじめの対応を
してきたとは認められず、

さらには美桜子さんがいじめられていた事が
容易に認識でき、

学校内での調査報告も
されていなかったと判断されました。

冒頭でまとめた様に
美桜子さんが受けた被害内容は、

  • シカト
  • 悪口(ウザい、キモいなど)※上記悪口をワザと本人に聞こえるように言う
  • スカートを切る
  • カバンを蹴っ飛ばす
  • 本人のノートに「死ね」などを書きまくる
  • 掃除の時に教室のゴミを美桜子さんの机の下にまとめる
  • 美桜子さんの机だけを廊下に出す
  • トイレの個室に入っている時に上から水をぶっかける
  • 上靴の中に画鋲

と言った様に「証拠」として残らない
間接的なものがありますが、

美桜子さんの母親が
いじめた生徒と電話したり

担任の先生と話したりした
内容を録音していた事が

「いじめの事実」を認める後押しを
していると言えるでしょう。

 

また、いじめていた生徒達の
事情聴取から学校側の発言と
食い違う内容が出てきたために
(いじめを早期に対応していた)

裁判では学校側の言い分を
認めない(信頼出来ない)と判断している事

明らかとなっています。

さらに担任から校長・理事長への報告も
されていなかった事も明らかとなりました。

 

最終的に学校側の一連の対応は、
美桜子さんが受けたいじめを知っていた
(知る事が出来た)のにも関わらず

放置した事と判断し安全配慮義務違反と評価
(生徒を学校問題から守る義務を破った)

されてしまいました。

加害者側が「友達だからいじめじゃない」と言ってきたら

加害者側がよく言い訳の様に
言ってくる内容として、

  • 「友達だと思って自分は接していた」
  • 「仲良しのハズだった」
  • 「じゃれ合いの延長」
  • 「いじめるつもりは一切無い」

このセリフはよく耳にすると思いますが
仲良ければ何やっても良い訳ではありません。

「友達関係であること」が裁判で
判決内容に影響することがあるのでしょうか?

 

今回の裁判では「友達関係」でも
行った事に対しての「線引き」となる
判決となっています。

実際の裁判で裁判長が言った内容は、

しかし,プロフィール帳を交換したり,一緒にプリクラを撮影したことがあったとしても,思春期の生徒であれば,人間関係をさらに悪化させないため,表面的に取り繕って付き合いをしているだけの可能性も十分に考えられるから,これらの事実が認められるからといって,ただちに前記認定の本件6名の各行為がなかったということはできない。

引用元:『名古屋地方裁判所 平成23年5月20日 損害賠償請求事件

となり、友達関係の仲でも
いじめはいじめだと裁判長が
一線を置いている内容となっています。

簡単に言えば、嫌われない様に
敢えて友達だと体裁を整える行為を
する事もあるとし、

今回の一連の関係を
一種の社交辞令的なものとして

友達だから許される訳ではないと
判断していると言う事です。

実際「友達関係」だったとしても、
子供達が何時どこで何をやっているのか
分かりません。

「あの子と一緒なら大丈夫」と安心していると
見えないところで事件が起きている場合が
あるかも知れません。

我が子に少しでも異変を感じたら、
友達関係から調べた方が
良いかも知れませんね。

いじめと精神疾患との関連性

今回の裁判(判例)で
ポイントとなった事は

「いじめ」と「解離性同一性障害」との
関連性が認められたことです。

今までの裁判では「いじめ」と
「損害」の因果関係が

成立する事が裁判を
有利に進めていく要素となっていました。
(問題があったからこの損害が発生したと言う具合で)

以下の引用は判例文の中から引用したものです。

被告学園の関係者が何らの対応も行わず,放置したことによって,Aが解離性障害を発症し,その後解離性同一性障害に罹患し,本件自死に至ったことは明らかであり,被告らにおいて,平成14年10月以降,本件6名に対する適切な措置を講じていれば,その後の本件6名による行為の続発を阻止することができ,Aが絶望感を持つこともなく,解離性同一性障害に罹患し,本件自死に至ることもなかったと認められる。

引用元:『名古屋地方裁判所 平成23年5月20日 損害賠償請求事件

 

今回の判例だと、美桜子さんが
「解離性同一性障害」と診断されたのは
自殺する2年前ですが、

  • 強いストレスを受けると、それだけ「解離症状」が表面化するのにも時間が掛かる場合がある
  • 中学生の時から「初期の解離症状(自分がやられている場面を外から見ている様に感じる)」が出ていた

と認められ、ある程度の
時間の経過があったとしても

「いじめ」と「解離性同一性障害」との
因果関係を認める判決となりました。

約2年の月日が経っても裁判で
「いじめ」と「精神疾患」との因果関係を

認める判決が出たことは
非常に珍しい出来事になります。

もしかすると「精神疾患」が
認められるケースが増えるかも
知れませんので、

早めに弁護士に相談するべきでしょう。

被害者の子が自殺したことの責任について

今の裁判で「いじめ」と「自殺」との
関連性は密接な関係にあると
判断されています。
(因果関係が認められる)

この裁判が行われている時には
(平成23年)

既にいじめを放置してしまうと
自殺の危険性があるという事が

世間一般的に認知されていると
されていますから

  • 学校でいじめが起きていた
  • いじめを認識する事が容易であった
  • 学校がいじめの対応をしなかった(放置していた)

以上の事実が認められている場合には、
「いじめ」と「自殺」の関係性が
認められると言って良いでしょう。

判決では学校といじめていた生徒達に
美桜子さんが自殺してしまった責任を
認めていますが、

美桜子さんの母親にも
「自殺してしまった責任」があると
判断しています。

なぜならば、母親の持病が原因で
検査入院をする事になり

検査入院で家を空けているときに
美桜子さんがマンションから
飛び降り自殺してしまったからです。

今回の判例では、

  • 美桜子さんはいじめを受けて「解離性同一性障害」になった
  • いじめによって自傷行為が増え、リストカットなどの行為を頻繁に行う
  • 転校してからも容態が良くならず、救急車で運ばれることも度々あった
  • 医師からも「なるべく1人にしないように」と言われていた

という風に事実関係が認められていて、
いつ自殺するか分からない子を
1人にしてしまった事に対して

自殺の責任を裁判で指摘されてしまいました。

この1人にしてしまった事への
自殺との関連性や責任については
賛否両論あると思いますが、

あくまでも裁判は公平に行われるので
損害賠償額の減額になる可能性が高い様です。

※2019年4月24日 追記

名古屋地裁で「いじめ」と「自殺」との因果関係を認めていたのですが、2012年12月の控訴審で原審の判決が覆される事になりました(いじめと自殺との因果関係を認めない)。

この時点ではまだ「いじめ防止対策推進法」が制定されていないので、現在では自殺との因果関係を全て否定するわけではないと個人的に考えます。

もし、我が子がいじめを受けていて相手側の法的責任について知りたい場合には早めに弁護士に相談する事をオススメします。

 

解決までに10年掛かった名古屋「市邨学園」いじめ事件のまとめ

この裁判で遺族側は
相手側(加害者と学校に)に

  • 被告らは原告(遺族側)に対し約4300万の損害賠償金を支払う
  • 被告学園と理事、校長、担任に対しそれぞれ原告に対し100万の損害賠償金を支払う

事を求めました。

そして最終的に、

  • 被告らは原告に対し約1500万の損害賠償金を支払う
  • 原告のその他の請求を棄却

と判決が下されます。

裁判を提起してから約3年が経ち、
一応の終結が成されましたが

裁判に「10年」もかかったのは
「学校側の対応の遅さ」が
原因になっている事は明らかで、

最早悪意があると言われても
仕方が無い内容となっています。

 

今回の記事では「市邨学園」で起きた
事件の内容をまとめ、

裁判で争点となったポイントを
まとめてきました。

特に、

「精神疾患」が時間が経っていても
認められるとした画期的な裁判として有名

でもあります。

当り前の様に聞こえますが、
当時の裁判では稀な判決で

その後のいじめ問題に対して
非常に有意義な判例となって

これから「弁護士に依頼して裁判」と
考えているのであれば参考になると思います。

 

最後に「いじめ-ラボ」では
我が子のいじめをベースに
記事を更新しています。

もし良かったら他の記事も
読んでみてください!

 

いじめの対処法 「分からない」「どうすれば」をメールで受付中!

この記事で書いている内容は
私たちの子が実際に受けたいじめを
ベースにまとめています。

さらにこの記事を読んでいる
あなたをはじめ、

今現在いじめで悩んでいる方々に
少しでもお役に立てれる様に
日々勉強をしています。

そこで今回は記事の紹介だけで無く
これからどうやって
この問題と向き合って行くか、

分からない事などについて、
私たち家族が経験した事を中心に

「いじめ-ラボ」の相談コーナー
随時相談を受け付けております。

  • 我が子にいじめが発覚して、これからどうして良いのか分からない
  • 学校がキチンと対応してくれなくて不安だ...
  • 子供の様子がいつもとおかしい
  • 誰にも相談出来なくて、今の気持ちを聞いて欲しい!

など、具体的な内容について
相談を受け付けていますので、

私たち家族の経験が
少しでもお役に立てたら嬉しいです。

※「いじめ問題」について具体的な質問やお問い合わせを受付中!

我が家の「いじめ解決までの2年半」を凝縮した「いじめ-ラボ相談ページ」

長文になりましたが、
最後まで読んで頂き
本当にありがとうございました。

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